スイス研修まとめ02

04スイス

Bauma-Sternenbergの河川と都市の河川について

 研修6日目に訪れたSternenbergは、Zurich州東部の山間過疎地である。BaumaからSternenbergに向けて、川沿いに山岳トレイルを上っていった。一見何の変哲もない自然な川であったが、実は山岳トレイルの整備とともに自然な形に付け替えたということである。自然の多い山間部に流れる川だからこそ、自然のままに残す、そして可能な限り床止め工落差工、山留め工、歩道橋などの構造物は木造のものを用い、見た目に優しいばかりか永続的な維持管理補修という作業を必要とし、農閑期の雇用の確保にも役立つのである。

 川沿いを歩く、自然を楽しむということとはどういうことか、何のためにするのか。このSternenbergの河川トレイル、山岳トレイルと似たものを(実は似て異なるものなのだろうが)大都市Zurichに見つけるとは思いもよらなかった。かつて暗渠であった河川を掘り返し、自然に近い形に復旧したWolfbachの森は、そこが大都市Zurichの真ん中にあるということを忘れさせてくれるような空間である。さすがに流れる水はSternenbergのそれにははるかに及ばなかったが、この環境が人工的に作られたことが嘘のようである。Shanzengrabenのタウントレイルにおいてもそうである。いわゆる都市のメインストリートの裏側、どちらかといえば汚れた、雑多な、見せたくない部分であろうし、実際過去には汚染されていて埋められる運命にあった河川が、見事にやすらぎの場として復活しているのである。そこでもただ単純に「見た目」だけの追求でなく、「生態系」の復活をめざした取り組みがされており、その成果として魚類や水鳥といった比較的食物連鎖の上位の生物までもが生息できる環境が大都市のど真ん中にある。

 都市の生活に疲れた市民達はひとときのやすらぎを求めてこのような森や道を散策するのか。そして都市にある作られた自然に飽きたりず、本物に触れたくなったときBauma-Sternenbergにあるような自然へ向かうのだろうか。そこにスイスにおける都市と地方の関わり方、役割分担が見えてくるし、地方あっての都市だから都市生活者は地方の環境を守るべく負担をするというやり方が生まれるのだろう。昨年、わが国でも早明浦ダムなどで異常渇水が起こり、節水が叫ばれるとともに、都市生活のあり方や水 源となる山を守ろうという動きがあった。地方が廃れるとどういうことが起こるか、やっと気がつき始めたのかもしれない(喉元過ぎれば熱さ忘れたかもしれないが)。

 河川という自然にかかわり、潤いばかりでなく地域経済の振興もになうという考えはまだ日本にはないように思える。むしろ中小河川は都市、地方の区別なくブロック積みなどの工法により巨大な排水路と化している。河川だけでなく、公園でも道路でも、作れば終わりで、そのためには耐用年数の長いものを使う。維持管理には手間をかけたがらないのではないだろうか。もちろん公園や道路の植樹帯などの管理は行政ばかりでなく地域でもやらねばならないし、実際私たちの村でも老人クラブや地域ボランティアの方々による管理が行われているところもある。しかし、こんなもの作って誰が管理するのか、とか、作ったらそれっきりで何も管理もしないのなら作らないほうがましだ、といった話も出る場合がある。意識のなさ、行政と住民の意思の疎通のなさばかりがやけに目立つ。河川と行政と住民が地域の産業までも巻き込んで有機的に機能するにはまだまだ長い時間がかかりそうである。

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