04 技術士 口頭試験

03技術士試験対策

資質能力が直に問われる最後のヤマ場、実は出願が肝になる

 技術士2次試験の筆記試験という難関を無事くぐり抜けたら、ホッとするのもつかの間、最後の関門「口頭試験」が待ち構えています。口頭試験は己一人が複数の試験官と対峙するため、非常に緊張する試験です。しかし試験官は倒すべき敵ではありません。実は自分を技術士に導いてくれる案内人なのです。案内人にきちんと考えを伝えることができれば、迷いなく合格への道を歩むことができると思います。
 実は口頭試験で肝になるのが「出願書類」への記載内容です。この内容が十分に練られたものになっていないと、口頭試験で相当苦しい状況となり、ついには合格率90%と言われる口頭試験での残り10%の不合格者に陥るおそれがあるのです。

口頭試験の概要

 日本技術士会が発行している「技術士第二次試験受験申し込み案内」には、口頭試験についての概要が記されています。

 「技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式答案および業務経歴を踏まえ実施するものとし、次の内容(技術士に求められる資質能力【コンピテンシー】に基づくもの)を試問します。」

試問時間:20分(10分程度延長の場合もあり)

I 技術士としての実務能力

  • コミュニケーション(多様な関係者との明確かつ効率的な意思疎通)
  • リーダーシップ(多様な関係者との利害調整、とりまとめ)
  • 評価(成果や波及効果を評価し、次段階や別業務の改善に資する)
  • マネジメント(品質、コスト、納期、リスク等への要求を満たし、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること)

II 技術士としての適格性

  • 技術者倫理
  • 継続研さん

出典:令和4年度技術士第二次試験受験申込み案内(日本技術士会)より要約抜粋


 口頭試験では、以上の項目について確認することが明記されているので、試験時間内に受験者がこれらの能力を持つことを試験官に伝える必要があります。これが伝わるか否かが、合否の分かれ目になるといってもいいでしょう。試験官の質問のベースとなるのは「業務詳細」がほとんどです。

2019年の試験方式変更で変わったのか?

 2019年に技術士試験制度の変更があり、評価項目に資質能力(コンピテンシー)が明記されるようになりました。試験制度変更前(2019年以前)は、口頭試験での試問内容は事前に提出した「業務詳細」における技術的提案の妥当性や思考過程の確認に重きがおかれており、「何をどのように考えて、技術提案に至ったか」を説明する必要がありましたが、「技術提案の具体化に際して、どう対応したか」は、あまり重要な確認事項ではなかったと思います。

 2019年度以降は、口頭試験で「業務詳細」における技術提案の内容や思考過程を確認されることが少なくなり、逆に技術提案を具体化するうえでの調整・取りまとめや、QCDのバランス取り/4Mの配分、関係者への意思疎通について問われるものがほとんどになりました。

 しかし、ここで誤解してはいけません。現在の口頭試験試問の大前提に、「業務詳細における技術提案や思考過程が妥当であること」があるのです。いくらマネジメント・リーダーシップが妥当であり、コミュニケーションが図られていても、間違った技術提案や思考過程の上で行っていてはダメなのです。また技術提案の内容や思考過程がわかりにくい場合も、それらの確認に時間を割かれてしまい、結局試験官に理解してもらえなかったり、肝心の資質確認にまで至らなかったりして、残念な結果につながるおそれがあります。

 ここで「おや?」と思うことがあります。過去の試験においては、現在評価対象となっている資質能力(マネジメント・評価・コミュニケーション・リーダーシップ)は全く確認されなかったのでしょうか?
 平成30年度の「技術士第二次試験受験申し込み案内」の「口頭試験」に関する部分を読むと、試問事項は次のように書かれています。

  • I 受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容及び応用能力
    • 経歴及び応用能力
  • II 技術者としての適格性及び一般的知識
    • 技術者倫理
    • 技術士制度の認識その他

 ご覧のとおり、2019年以降の技術士試験で確認されるようになった、資質能力に関するものは記載されておりません。しかし考えてみてください。いくら技術的提案の内容が高度なものであっても、実現できないようなものでは机上の空論に過ぎず、その技術提案者が高等な応用能力を有するとは思えませんし、業務において技術提案を実現していくには、QCDのバランス取りや、人・モノ・カネの配分、関係者との調整とそのための意思疎通は不可欠です。

 逆読みすると、2019年度までの試験では、技術者としての資質能力(マネジメント・評価・コミュニケーション・リーダーシップ)は備えていることが必要条件とされ、その上で「業務詳細における技術提案や思考過程が妥当であること」「業務における応用能力」が試問されていたのですが、2019年度以降の試験では、逆に「業務詳細における技術提案や思考過程が妥当であること」を前提条件として、技術者としての資質能力(マネジメント・評価・コミュニケーション・リーダーシップ)について、提案・思考過程や実施過程においてどのように行ったのか試問されることになったと考えます。
 平成27年1月に日本技術士会が出した「修習技術者のための修習ガイドブック 第3版」において、基本修習課題の中に技術士試験でも確認されるコンピテンシーに関するものが記載されており、これらとの整合性が図られた結果、試験での試問内容においてもコンピテンシーが前面に出てきたのだと思います。

 ということは、20分間という短い試験時間内に、自分の資質能力をきちんと試験官に伝えないといけないのに、前提条件となる技術的提案の妥当性について説明を求められるようでは、厳しい試験になってしまう恐れがあります。つまりは、出願の時点で「業務詳細における技術提案や思考過程が妥当であること」、あわせて「資質能力(マネジメント・評価・コミュニケーション・リーダーシップ)を、思考過程や実施過程においてどのように発揮したか」がわかりやすい業務詳細を記述して提出しないと、説明に時間を取られるばかりで、試験官にはうまく伝わらなかったという結果につながりかねません。筆記試験に合格し、口頭試験の受験準備を始めてから、出願時の提出書類の重要さが身にしみた方も多いのではないかと思います。

 口頭試験をすんなり通過するためには、筆記試験合格を見据えたうえで、4月に提出する出願書類をしっかりと作り込んでおくことが極めて重要です。

口頭試験に臨む際に気をつけること

 口頭試験では、その場に頼れる人は誰もいません。頼れるのは自分のみです。
 私も初めて口頭試験を受けたときは、3日前から熟睡できませんでした(小心者だ・・)。緊張するのは当たり前なのですが、緊張しすぎて実力を発揮できなかった・・ということにならないように、次のことに気をつけてください。

  • 早口にならない
  • 長くしゃべりすぎない(ワンフレーズで手短に、30秒以内)
  • 会話のキャッチボール(やりとり)を行う
  • はい、いいえなど、結論を先に答えて、理由は後付けする
  • 質問の内容が分からない時は、試験官に確認する
  • 必要なら、手(指、掌、腕)や身振りを使う
  • ホワイトボードを使うことを指示されることもあるので、1分程度で説明できるよう準備する

 何よりも大事なのは、「場数」を踏むことです。事前に受験支援組織(SUKIYAKI塾など)や職場で「口頭模擬試験」を行ってもらったり、web会議ツールで口頭模試を受けたりするのはもちろん、そういう機会がとれない時には家庭などでもいいので、「しゃべる・伝える」ことに慣れておくことが大事です。自分の弱点を発見することにもつながります。

口頭試験質問例

※あくまで想定質問であり、実際の口頭試験における質問ではありません。参考にとどめてください。

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