01 技術士 コンピテンシーについて

03技術士試験対策

コンピテンシーとは?

 そもそも「コンピテンシー」とは一体何でしょうか。Webで検索すると、「能力・行動特性(野村総合研究所)」「高業績者の行動特性(Wikipedia)」などの説明があります。

 また、コンピテンシー以外にも”能力”を意味する言葉には、「リテラシー」、「スキル」がありますが、これらとはどう違うのでしょうか。

 私見ですが、次のように区分できると考えます。

  1. コンピテンシー:よい結果をもたらすための行動の仕方・その能力、課題解決のために経験などにより培われた能力(仕事をうまくやるための経験能力)
  2. リテラシー:読解力、理解力(学習により培われた能力)
  3. スキル:もともと持っている能力に加えて、訓練や学習を通じて取得したものを加えた、総合的な能力(総合的な能力)

 つまり技術士には、基礎的・専門的な科学技術に関する知識だけではなく、仕事(業務)をうまくやる(成功に導く)ための能力(コンピテンシー)が要求されているのです。

修習ガイドブック

 平成27年1月に、日本技術士会が「修習技術者のための修習ガイドブック 第3版」を出しています。(修習技術者とは、技術士第一次試験の合格者および、それと同等である教育課程の修了者:JABEE認定者 のことを言います。)
 このガイドブックは、修習技術者が技術士となるためには、どういった能力をどのように形成していくべきかを示したものですが、実はこの中に二次試験に関係することが説明されています。

修習技術者の基本修習課題として、

  1. 専門技術遂行能力
  2. 業務遂行能力
  3. 行動原則

の3つが挙げられていて、それぞれの課題に対する資質・能力(具体的な説明)は次のようになります。

1.専門技術能力

1.1基礎知識の理解と応用
1.2専門技術知識の理解と応用
1.3特定の国・地域に関する知識の理解と応用

2.業務遂行能力

2.1問題分析
2.2解決策のデザインおよび開発
2.3評価
2.4技術活動のマネジメント
2.5コミュニケーション
2.6国際的な適応力
2.7判断
2.8リーダーシップ

3.行動原則

3.1社会の保全・持続
3.2法と規則
3.3倫理
3.4継続研鑽
3.5決定における責任

 以上からもわかるように、技術士試験で確認される8つのコンピテンシー(後述します)は、修習課題における資質・能力として示されています。修習ガイドブックにおける、それぞれの資質・能力の説明は割愛しますが、2019年以降の技術士試験で確認されるようになったコンピテンシーは、実はかなり前から明確化されていたことが分かります。なお、修習技術者の基本修習課題については、IEA(国際エンジニアリング連合)のPC(Professional Competencies)が参考にされているようです。

出典:日本技術士会「修習技術者のための修習ガイドブック-技術士を目指して-第3版」

技術士に必要なコンピテンシー

 2019年以降に出された「技術士第二次試験受験申し込み案内」をめくっていくと、「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」というページがあり、8つのコンピテンシーについて次のように定義されています。

1.専門的学識

  • 技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
  • 技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。

2.問題解決

  • 業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
  • 複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。

3.マネジメント

  • 業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。

4.評価

  • 業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。

5.コミュニケーション

  • 業務履行上、口頭や文書等での方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
  • 海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。

6.リーダーシップ

  • 業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者との利害等を調整しとりまとめることに努めること。
  • 海外における業務に携わる際は、多様な価値感や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。

7.技術者倫理

  • 業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
  • 業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
  • 業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。

8.継続研鑽

  • 業務履行上必要な知見を深め、技術を修得し資質向上を図るように、十分な継続研さん(CPD)を行うこと。

出典:令和2年度技術士第二次試験受験申し込み案内 P10-11


 見ただけで何だか「おなか一杯」感があり、これだけの内容を本当に理解して試験に臨まないといけないのか?と不安になってしまいますが、これらの能力は筆記試験と口頭試験で必ず確認されます。
 また口頭試験は出願書類が土台となるので、出願書類内の業務経歴や詳細業務を記述するにあたり、口頭試験で確認されるコンピテンシーをしっかり理解して作成したか否かが、試験結果に大きな影響を与えることになります。

各試験で確認されるコンピテンシー

 2019年以降の「技術士第二次試験受験申し込み案内」では、筆記試験のI、II、III、および口頭試験で確認される能力について説明されています。

筆記試験(総監を除く)

I 必須科目

技術部門全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決及び課題遂行能力に関するもの

評価項目:技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち、

  • 専門的学識
  • 問題解決
  • 評価
  • 技術者倫理
  • コミュニケーション
II 選択科目

1.選択科目についての専門知識に関するもの

評価項目:技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち、

  • 専門的学識
  • コミュニケーション

2.選択科目についての応用能力に関するもの

評価項目:技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち、

  • 専門的学識
  • マネジメント
  • リーダーシップ
  • コミュニケーション
III 選択科目

選択科目についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの

評価項目:技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち、

  • 専門的学識
  • 問題解決
  • 評価
  • コミュニケーション

口頭試験(総監を除く)

 技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、次の内容について試問する。

I 技術士としての実務能力
  • コミュニケーション
  • リーダーシップ
  • 評価
  • マネジメント
II 技術士としての適格性
  • 技術者倫理
  • 継続研さん

出典:令和2年度技術士第二次試験受験申し込み案内 P7-9

以上のように、筆記試験、口頭試験ともに、確認されるコンピテンシー項目が明示されています。しっかり理解してこれらを踏まえて試験に望みましょう。

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